AIエージェント開発のフレームワーク選定が経営課題になる理由
homulaは、エンタープライズ企業向けにAIエージェントの戦略策定・PoC・実装・運用・内製化までを一気通貫で支援するAIインテグレーターです。LLM-Native FDE(Forward Deployed Engineer)が1-2人で従来5-10人分の成果を実現する体制で、技術選定から本番運用までを伴走します。
2025年に入り、AIエージェントの開発フレームワークは急速に成熟しています。LangChainエコシステムのLangGraph、GoogleがCloud NEXT 2025で発表したADK(Agent Development Kit)、OpenAIが提供するAgents SDKの3つが、事実上の主要選択肢として市場を形成しています。
しかし、フレームワークの選定を誤ると、PoC段階では見えなかった問題が本番運用で噴出します。状態管理の限界、マルチエージェント間の協調の困難さ、特定ベンダーへのロックイン――これらは技術的負債として蓄積し、後からの修正コストは指数関数的に増大します。
本記事では、3つのフレームワークをエンタープライズ実務の観点から比較し、「コードで作る部分」と「ノーコードで作る部分」の最適な分業設計を提示します。
3フレームワークの基本プロファイル
LangGraph:グラフベースの状態管理王者
LangGraphは、LangChainエコシステム内のオーケストレーションフレームワークです。エージェントのワークフローを有向グラフ(DAG)として明示的に定義し、各ノードがLLM呼び出し・ツール実行・条件分岐などの処理を担います。
GitHub Stars 80,000以上(LangChain全体)を誇る最大のコミュニティを持ち、ドキュメントや事例が豊富です。状態管理の明示性とデバッグのしやすさが最大の強みであり、複雑なマルチステップの業務フローを透明性高く設計できます。
Google ADK:Googleエコシステム統合の新星
Google ADK(Agent Development Kit)は、2025年4月のGoogle Cloud NEXTで発表されたオープンソースのPythonフレームワークです。Google自身のプロダクト(AgentspaceやGemini)を動かしている基盤と同じ技術をベースとしており、Vertex AI・BigQuery・AlloyDBとの深い統合が特徴です。
100以上のLLMをサポートし(LiteLLM経由)、ベンダーニュートラルな運用も可能です。階層的なエージェント構成、双方向の音声・映像ストリーミング、包括的なトレーシング機能を備え、エンタープライズ向けの本番運用を強く意識した設計となっています。
OpenAI Agents SDK:最速プロトタイピングの軽量フレームワーク
OpenAI Agents SDK(旧Swarm)は、マルチエージェントワークフローを構築するための軽量なフレームワークです。最小限のプリミティブ(Agent・Handoff・Guardrails・Tracing)で構成され、学習コストの低さと迅速な開発サイクルが最大の魅力です。
OpenAIモデルとの統合が最も円滑ですが、他社モデル(Claude・Gemini等)の利用もサポートしています。Hosted Tools(コード実行・Web検索・ファイル検索)が標準で組み込まれており、追加のインフラ構築なしに多機能なエージェントを構築できます。
9軸の詳細比較
| 評価軸 | LangGraph | Google ADK | OpenAI Agents SDK |
|---|---|---|---|
| アーキテクチャ | グラフベース(DAG) | 階層的エージェント構成 | 軽量プリミティブベース |
| 状態管理 | ◎ 明示的・永続的 | ○ 自動的・セッション管理 | △ 基本的 |
| マルチエージェント | ◎ グラフ内で自在に構成 | ◎ 階層型オーケストレーション | ○ Handoffパターン |
| LLMベンダー選択 | ◎ 完全ベンダーニュートラル | ○ Gemini最適化+100以上対応 | △ OpenAI最適化+他社対応 |
| ツール統合 | ◎ LangChainエコシステム | ◎ Google Cloud統合 | ○ Hosted Tools+カスタム |
| Human-in-the-Loop | ◎ グラフの任意ノードに挿入 | ○ コールバック対応 | △ 基本的 |
| テスト・評価 | ○ LangSmith連携 | ◎ 組み込みテストハーネス | ○ Tracing+Evals |
| デプロイ | ○ LangGraph Platform | ◎ Vertex AI・Cloud Run | ◎ OpenAI API基盤 |
| 学習コスト | △ 概念が多い | ○ Google開発者に親和 | ◎ ミニマルで習得が速い |
アーキテクチャの本質的な違い
LangGraph:「設計図を自分で描く」
LangGraphの本質は、エージェントの振る舞いを有向グラフとして完全に制御できる点にあります。各ノード(LLM呼び出し・ツール実行・人間の承認待ち等)と遷移条件を明示的に定義するため、デバッグ・テスト・監査が容易です。
この透明性は、金融・医療・法務など「なぜその判断をしたか」の説明責任が求められるエンタープライズ領域で特に価値を発揮します。一方、シンプルなユースケースに対してはオーバーエンジニアリングになりがちです。
Google ADK:「Googleの流儀に乗る」
Google ADKは、Googleが自社プロダクトで実践している設計パターンをフレームワーク化したものです。階層的なエージェント構成(ルートエージェントがサブエージェントにタスクを委任)を標準パターンとし、Google Cloudの各サービスとの統合が極めて円滑です。
Google Cloud環境が前提の企業にとっては、インフラからフレームワークまで一貫したサポートを受けられる安心感があります。ただし、非Google環境では統合の深さを享受できず、ADKの価値が半減します。
OpenAI Agents SDK:「最速で動くものを作る」
OpenAI Agents SDKは、「複雑な概念を学ぶ前に、まず動くエージェントを手にする」ことを最優先に設計されています。100行未満のコードで機能するエージェントを構築でき、PoCのスピードでは他の追随を許しません。
ただし、状態管理やマルチエージェントの複雑な協調については、LangGraphやADKほどの表現力がありません。PoCから本番への移行時にリファクタリングが必要になるケースが多い点は、事前に認識しておくべきです。
エンタープライズでの選定指針
「どのフレームワークか」ではなく「どう組み合わせるか」
homulaの導入実績から得た最大の知見は、**「単一フレームワークですべてを賄おうとしないこと」**です。エンタープライズの実務では、以下のような役割分担が最も効果的です。
コードで作るべき部分(フレームワークの領域):
- 複雑な推論ロジックと状態管理
- マルチエージェント間の協調・委任パターン
- カスタムツールの実装とエラーハンドリング
ノーコードで作るべき部分(n8n等の領域):
- SaaS・基幹システムとの接続と業務フローの組み立て
- トリガー設定(メール受信・スケジュール・Webhook等)
- 人間の承認フローや通知の統合
- 実行ログの可視化と監査
推奨構成パターン
パターン1:LangGraph × n8n(最も柔軟)
- LangGraphで高度なAIエージェントの推論ロジックを構築
- n8nでSaaS連携・トリガー管理・Human-in-the-Loopを統合
- 対象:ベンダーニュートラルなマルチモデル戦略を採る企業
パターン2:Google ADK × n8n(Google中心環境)
- Google ADKでGemini/Vertex AIベースのエージェントを構築
- n8nで非Google系システム(SAP・Salesforce等)との連携を担当
- 対象:Google Cloudが主要インフラの企業
パターン3:OpenAI Agents SDK × n8n(最速PoCから本番へ)
- OpenAI Agents SDKでPoCを迅速に構築
- n8nで業務フローへの統合と全社展開基盤を整備
- 対象:まずは成果を見せたい、スモールスタート志向の企業
Agensによるフレームワーク横断の接続基盤
いずれのフレームワークを選択しても、エンタープライズ環境では「LLMと業務システムの安全な接続」が共通課題になります。homulaのAgensは、MCP(Model Context Protocol)を活用したエンタープライズ向け統合プラットフォームとして、200以上のツールとの接続を構築ゼロで実現します。
AgensのMCPハブを介することで、LangGraph・ADK・OpenAI Agents SDKのいずれからも、統一されたセキュリティポリシーと監査ログの下で業務システムにアクセスできます。フレームワークの入れ替えや併用が発生しても、接続基盤を作り直す必要がありません。
よくある質問
Q1. PoCではどのフレームワークを使うべきですか?
スピード重視ならOpenAI Agents SDK、設計の透明性を重視するならLangGraphを推奨します。いずれの場合も、homulaの5日間ブートキャンプで動くプロトタイプとROI試算を短期集中で完結させることが可能です。
Q2. フレームワークの選択はロックインにつながりますか?
LangGraphとGoogle ADKはオープンソースであり、コードレベルでのポータビリティは高いです。OpenAI Agents SDKはOpenAI APIへの依存度が相対的に高いですが、エージェントのロジック自体は汎用的なPythonコードです。いずれの場合も、業務システムとの接続層をAgensのMCPハブで抽象化しておくことで、フレームワーク変更時の影響を最小化できます。
Q3. n8nだけでAIエージェントは作れないのですか?
n8n v2.0はマルチエージェント・MCP対応・Model Selectorを搭載しており、多くのユースケースをn8n単体でカバーできます。ただし、複雑な推論ロジック(多段階の状態遷移・条件付きバックトラック等)が必要な場合は、LangGraph等のフレームワークとの併用が効果的です。
AIエージェントフレームワークの選定・アーキテクチャ設計でお悩みの方は、homulaの無料相談をご活用ください。コンポーザブルAIアーキテクトとして、御社の要件に最適な技術構成を提案します。