AIワークフローツール選定で見落とされがちな「設計思想の違い」
homulaは、エンタープライズ企業向けにAIエージェントの戦略策定・PoC・実装・運用・内製化までを一気通貫で支援するAIインテグレーターです。日々の技術選定支援の中で、「Difyとn8nのどちらを採用すべきか」という相談を多く受けます。
AI技術の進歩とともに、業務の自動化や効率化を実現するワークフローツールへの注目が高まっています。その中でも特に注目を集めているのがDifyとn8nです。一見似たようなツールに見えますが、実は設計思想や得意分野が大きく異なります。
2025年現在、日本のAIワークフロー市場ではDifyが先行して導入されていますが、グローバル市場ではn8nが圧倒的な成長を見せています。n8nの月間訪問者数は750万人に達し、Difyの180万人を大きく上回っています。
本記事では、両ツールの本質的な違いを7つの評価軸で整理し、自社の要件に応じた選定指針を提示します。
DifyとN8nの基本的な位置づけ
カテゴリとしては、Difyは元々生成AIノーコードアプリケーション基盤、n8nはiPaaS(Integration Platform as a Service)として生まれました。昨今、Difyの外部サービス接続機能の拡充や、n8nの生成AI対応が進み、両者は急速に接近しています。しかし、機能面での特徴は依然として大きく異なります。
結論を先に述べると、「チャットやRAGなどの対話型AIアプリ」を作るならDify、「業務自動化などのワークフロー型AIエージェント」を構築するならn8nが適しています。
Difyの得意領域
Difyは、LLM(大規模言語モデル)を中心としたAIアプリケーション開発に特化したプラットフォームです。特にチャットボット型アプリケーションやRAGシステムの構築において強みを発揮します。
- チャット型AIアプリケーション:対話型インターフェースを持つAIアシスタント
- RAGシステム:企業文書や知識ベースを活用した情報検索・回答生成
- コンテンツ生成アプリ:テキスト生成、要約、翻訳などの言語処理タスク
- Q&Aシステム:FAQや社内ナレッジベースと連携した自動応答
n8nの得意領域
n8nは、汎用的なAIワークフロー・プロセス自動化を目的としたプラットフォームです。「ノード」と呼ばれる部品をつなぎ合わせることで、WebサービスやデータベースやAPIを連携させ、複雑な業務プロセス全体を自動化できます。
- 複数システムを連携した段階的なタスク実行
- メール受信やスケジュールなど豊富なトリガーによる自動起動
- JavaScriptベースのカスタムコードによる柔軟なロジック実装
- 500以上のSaaS・基幹システムとのネイティブ連携
7つの評価軸で見る機能比較
| 評価軸 | Dify | n8n |
|---|---|---|
| AI/LLM機能 | RAG・プロンプト管理が充実 | AIエージェントノードで柔軟に構築 |
| 外部連携数 | 主要LLMプロバイダ中心 | 500以上のSaaS・API連携 |
| トリガー種類 | API/Webhook中心 | メール・スケジュール・DB変更等多数 |
| カスタムコード | Python対応 | JavaScript/Python対応 |
| セルフホスト | Docker対応 | Docker/Kubernetes対応 |
| エンタープライズ機能 | SSO・チーム管理 | マルチテナント・環境分離・RBAC |
| データ所在地(SaaS利用時) | US/中国 | EU(ドイツ企業) |
アーキテクチャの違い
Difyのアーキテクチャは「LLMを中心に据えた放射型」です。すべての機能がLLMの入出力を軸に設計されており、プロンプトの管理やモデルの切り替えがUIレベルで容易に行えます。
一方、n8nのアーキテクチャは「ノードを直列・並列に接続するパイプライン型」です。LLMはあくまで多数あるノードの一つであり、データベース操作、API呼び出し、条件分岐、エラーハンドリングといった業務ロジック全体を一つのワークフローとして統合管理できます。
この違いは、PoC(概念実証)の段階では小さく見えますが、本番運用に移行する際に決定的な差となります。業務プロセス全体を自動化するには、LLM以外の処理との統合が不可欠だからです。
エンタープライズ導入時の注意点
セキュリティとガバナンス
セルフホストとして使用する場合、セキュリティ面では大きな差はありません。しかし、SaaSとして利用する場合、データ所在地の違いが重要になります。n8nはドイツ企業であり、SaaS版のデータはEU内に保管されます。日本企業のデータガバナンス要件によっては、この点が選定の決め手になる場合があります。
価格体系
Difyが主にAPI呼出回数とユーザー数に基づく従量制を採用しているのに対し、n8nはワークフロー実行数に基づく定額制を基本としています。大量のワークフローを定常的に実行するエンタープライズ用途では、n8nの方がコスト予測が立てやすい傾向にあります。
運用・保守
n8nは大規模組織での運用に必要なマルチテナント、環境分離(開発・ステージング・本番)、専用サポートなどの機能を備えています。全社展開を見据えた場合、この点はDifyに対するn8nの明確な優位性です。
ユースケース別の推奨選定
Difyを選ぶべきケース:
- 社内ナレッジベースを活用したRAGチャットボットを短期間で構築したい
- LLMのプロンプト管理やモデル切り替えをUI上で完結させたい
- 対話型AIアプリケーションが主な開発対象である
n8nを選ぶべきケース:
- 複数のSaaS・基幹システムをまたぐ業務プロセスを自動化したい
- AIエージェントに「判断」と「実行」の両方を担わせたい
- 全社展開を前提としたガバナンス・環境分離が必要である
両方を組み合わせるケース:
- Difyで対話型のフロントエンドを構築し、n8nでバックエンドの業務フローを自動化する構成は、実務上非常に有効です。homulaの導入支援でも、この「Dify × n8n」のハイブリッド構成を採用するケースが増えています。
homulaの推奨アプローチ
homulaは特定ツールに縛られないベンダーニュートラルな立場で、要件に応じた最適な技術選定を支援します。DifyとN8nの選定に迷っている場合は、以下のステップでの検討を推奨します。
- 業務棚卸し:自動化対象の業務プロセスを洗い出し、「対話型」か「ワークフロー型」かを分類する
- PoC実施:3-5日のブートキャンプで、実際の業務データを使ったプロトタイプを構築する
- アーキテクチャ設計:単体利用かハイブリッド構成かを含め、全社展開を見据えた設計を行う
ツール選定は手段であり、目的ではありません。重要なのは「どの業務課題を、どの程度のスピードと確実性で解決するか」です。
AIワークフローツールの選定でお悩みの方は、homulaの無料相談をご活用ください。5日間のブートキャンプでは、業務棚卸し・プロトタイプ構築・ROI試算を短期集中で完結させます。
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