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Claude Skills入門 — Part 5(最終回)

実践ガイド —プラットフォーム・共有・運用

Agent Skillsを実際の開発・業務環境に導入し、チームや組織で活用するための実践ガイド。プラットフォーム別の対応状況から、共有・配布方法、エンタープライズ運用の要点まで網羅します。

読了時間: 約12分|最終更新: 2025年7月
OVERVIEW

Agent Skillsのプラットフォーム運用とは、Claude API・Claude.ai・Claude Code・Agent SDKの4つのプラットフォームそれぞれにSkillsを適切に配置・管理し、チームや組織全体で安全かつ効率的に活用するための実践的な設計・運用プロセスです。

Part 1〜4では、Skillsの基本概念から書き方、評価駆動開発、他機能との使い分けまでを解説してきました。最終回となる本記事では、Skillsを実際のプロジェクトや組織に導入するために必要な「どこで」「どう共有し」「どう運用するか」を体系的に整理します。

特にエンタープライズ環境では、セキュリティレビュー、評価の義務化、ライフサイクル管理が不可欠です。Skillの作成だけでなく、組織として安全に運用し続けるための仕組みを構築しましょう。

PLATFORM SUPPORT

プラットフォーム対応概要

Agent Skillsは主要4プラットフォームで利用可能ですが、対応範囲と設定方法がそれぞれ異なります。まず全体像を把握しましょう。

プラットフォームプリビルトカスタム配置方法
Claude APISkills API(/v1/skills)でアップロード
Claude.aiSettings > Features からZIPアップロード
Claude Codeファイルシステム(.claude/skills/
Agent SDKファイルシステム(.claude/skills/

重要な制約: カスタムSkillsはプラットフォーム間で同期されません。APIにアップロードしたSkillはClaude.aiやClaude Codeでは利用できず、その逆も同様です。Gitリポジトリを中心に一元管理し、各プラットフォームに個別にデプロイする設計が必要です。

PLATFORM DETAILS

各プラットフォームの詳細

Claude API

プリビルトSkillsとカスタムSkillsの両方に対応。Skills機能はMessages APIのcontainerパラメータを通じて統合されており、コード実行環境上で動作します。

プリビルトSkillsはskill_idを指定するだけで即利用可能。カスタムSkillsはSkills API(/v1/skillsエンドポイント)経由でZIPファイルまたは個別ファイルとしてアップロードします。アップロードしたSkillはワークスペース全体で共有されるため、同じワークスペースの全メンバーが利用可能です。

必要なベータヘッダー(3つ全て必須)

code-execution-2025-08-25

コード実行コンテナの有効化(Skillsの実行基盤)

skills-2025-10-02

Skills機能の有効化

files-api-2025-04-14

コンテナへのファイルアップロード・ダウンロード

1リクエストあたり最大8つのSkillsを指定可能。複数Skillを組み合わせて、Excelでデータ分析→PowerPointでプレゼン作成といった複合ワークフローも実現できます。ただしAPI実行環境にはネットワークアクセスがなく、ランタイムでのパッケージインストールも不可という制約があります。

Claude.ai

プリビルトSkillsは「ファイル作成」機能として自動で組み込まれており、PowerPoint・Excel・Word・PDFの作成・編集を依頼すると対応Skillが自動発動します。カスタムSkillsはSettings > FeaturesからZIPアップロードで導入可能(Pro・Max・Team・Enterpriseプラン対象)。

注意: Claude.aiのカスタムSkillsは各ユーザー個人に紐づいており、組織全体での共有や管理者による一括管理はできません。チーム展開には各メンバーが個別にアップロードする必要があります。

Claude Code

カスタムSkillsのみ対応。最大の特徴はファイルシステムベースの配置方式で、所定のディレクトリにSkillを置くだけでClaude Codeが起動時に自動スキャン・検出します。Gitとの親和性が高く、APIアップロードの手間がありません。

4つのスコープと優先順位

1
Enterprise最高優先度
管理者が設定

組織全体の必須標準

2
Personal
~/.claude/skills/

個人の好み・スタイル。全プロジェクトに適用

3
Project
.claude/skills/(リポジトリ内)

チーム共通のルール。クローンした全員に適用

4
Plugins
インストールされたプラグイン

コミュニティ共有Skill

命名のベストプラクティス

同名Skillは上位スコープが優先されるため、reviewのような汎用名ではなく、frontend-pr-reviewのようにスコープが明確な名前にすることで、意図しない上書きを防げます。

Claude Agent SDK

カスタムSkillsに対応。Claude Codeと同じファイルシステムベースの仕組みで、.claude/skills/にSkillディレクトリを配置し、allowed_tools設定に"Skill"を含めることで有効化。起動時に自動検出され、タスクに応じて動的に読み込まれます。

プリビルトSkills一覧

pptx

PowerPoint

プレゼン作成・編集

xlsx

Excel

データ分析・チャート

docx

Word

ドキュメント作成

pdf

PDF

PDF生成・フォーム入力

PLATFORM COMPARISON

プラットフォーム選択フローチャート

利用シーンに応じた最適なプラットフォームの選び方を整理します。

自社アプリケーションにSkillsを組み込みたい

Claude API

ワークスペーススコープで共有。最大8 Skills/リクエスト

個人の日常業務を効率化したい

Claude.ai

ZIPアップロードで即利用。個人スコープ

開発チームの標準ワークフローを統一したい

Claude Code(Projectスコープ)

.claude/skills/ にコミット。Gitで配布

組織全体のコンプライアンス標準を強制したい

Claude Code(Enterpriseスコープ)

最高優先度。全スコープをオーバーライド

カスタムエージェントにSkillsを組み込みたい

Agent SDK

ファイルシステムベース。allowed_toolsで有効化

SHARING & DISTRIBUTION

共有と配布

Skillsをチームや組織で共有するには、利用プラットフォームに応じた方法を選択します。

Gitリポジトリ

推奨

対象: チーム

.claude/skills/ にコミット。既存のGitワークフロー(PR、コードレビュー)にそのまま乗るため、新たな配布インフラ不要。

プラグインバンドル

対象: コミュニティ

Claude Codeプラグインとしてパッケージ化。汎用的・プロジェクト非依存のSkillに適する。

Skills API

対象: 組織(API利用者)

/v1/skills でアップロード。ワークスペース全体で共有。バージョン管理もAPI経由で可能。

エンタープライズ管理

強制力あり

対象: 組織全体

管理者が設定。最高優先度で全スコープをオーバーライド。必須標準・コンプライアンス要件に使用。

クロスプラットフォーム管理

複数プラットフォームでSkillsを展開する組織では、Gitリポジトリを唯一のSingle Source of Truthとして管理し、各プラットフォームへの同期プロセスを構築してください。Skillsはプラットフォーム間で自動同期されないため、この設計が不可欠です。

Gitを中心としたデプロイフロー

Git Repository(SSOT)

.claude/skills/

各プラットフォームに個別デプロイ

Claude API

Claude.ai

Claude Code

Agent SDK

ENTERPRISE OPERATIONS

エンタープライズ運用の要点

組織でSkillsを本格運用する際には、セキュリティ、評価、ライフサイクル管理、運用規模の4つの観点で設計が必要です。

01

セキュリティ レビュー

02

評価の 義務化

03

ライフサイクル 管理

04

運用規模の 管理

セキュリティレビュー

Skillsはコードを実行し、ファイルシステムにアクセスし、外部ツールを呼び出す能力を持ちます。デプロイ前の監査は必須です。

主なリスク指標

コード実行

scripts/ 内のファイル(.py, .sh, .js等)

指示操作

安全ルールの無視指示、行動隠蔽の指示

MCP参照

外部ツール(ServerName:tool_name)への参照

ネットワークアクセス

URL、APIエンドポイント、curl、fetch等

ハードコード認証情報

APIキー、トークン、パスワード

ファイルシステムアクセス

Skillディレクトリ外のパス、パストラバーサル(../)

Skillのインストールは、本番システムへのソフトウェアインストールと同等の慎重さで扱いましょう。サードパーティや他チームから受け取ったSkillは、全ファイルの通読、サンドボックスでのスクリプト実行テスト、ネットワークアクセスパターンの検索、認証情報の確認を完了してからデプロイしてください。

EVALUATION & LIFECYCLE

評価の義務化

Part 3の評価駆動開発を組織の標準プロセスとして制度化します。デプロイ前に3〜5シナリオの評価スイートの提出を必須とし、以下の5次元で品質を担保します。

次元測定内容失敗例
トリガー精度適切なクエリで発動し、無関係では沈黙全スプレッドシート会話で発動
単独動作Skill単体で正しく機能存在しないファイルを参照
共存性他Skillの動作を劣化させないdescriptionが広すぎて既存Skillのトリガーを奪う
指示遵守指示に正確に従うバリデーションステップをスキップ
出力品質正確で有用な結果を生成レポートフォーマットの崩れ

ライフサイクル管理

Skillsの運用は一度デプロイして終わりではありません。以下の6フェーズに沿った継続的な管理が必要です。

Phase 1

計画

繰り返しが多い・エラーが起きやすい・専門知識を要するワークフローを特定し、Skill化の候補を選定

Phase 2

作成・レビュー

作成者とレビュアーの職務分離を確立。Part 2-3のベストプラクティスに従った作成とセキュリティレビューの義務化

Phase 3

テスト

単独テスト(Skill単体)と共存テスト(既存Skillセットとの併用)の両方を実施

Phase 4

デプロイ

本番環境ではバージョン固定。Skillレジストリに目的・オーナー・バージョン・依存関係・評価ステータスを記録

Phase 5

監視

使用パターンの追跡とフィードバック収集。アプリケーションレベルでのログ実装が必要(Skills API自体にアナリティクスはなし)

Phase 6

改善 / 廃止

バージョン更新前に全評価スイートを再実行。スコア低下時は更新、継続失敗やワークフロー廃止時はSkillを廃止

SCALE MANAGEMENT

運用規模の管理

Skillの数が増えすぎると、descriptionのメタデータがシステムプロンプト内で競合し、トリガー精度が低下します。APIでは1リクエストあたり最大8 Skillsという制約もあります。

推奨アプローチ: 「まず狭く具体的なSkillから始め、パターンが見えたら統合する」

統合の具体例

開始時(個別Skill)

formatting-sales-reports
querying-pipeline-data
updating-crm-records

3枠を消費

統合後(評価スイートで同等性能を確認)

sales-operations

1枠で同等の機能をカバー

ロールベースのバンドル

営業チーム

CRM操作

パイプラインレポート

提案書作成

エンジニア

コードレビュー

デプロイワークフロー

インシデント対応

財務

レポート生成

データ検証

監査準備

GETTING STARTED

最初のSkill候補の選び方

「さっそくSkillを作りたい」と思った方へ。最初に作るべきSkillには4つの特徴があります。

繰り返し性

Claudeに何度も同じ説明をしている

例: レポートフォーマット、コーディング規約

クロスプロジェクト性

複数のプロジェクトで使う知識

例: データウェアハウスのクエリパターン

安定性

頻繁には変わらない手順やルール

例: ブランドガイドライン、コミット規約

マルチユーザー性

技術・非技術問わず複数人が恩恵を受ける

例: 社内ドキュメントテンプレート

「Claudeに何度も同じ説明をしている」と感じたら、それがSkillを作るべきタイミングです。Claude Codeのターミナルで「このワークフローをSkillにしたい」と伝えるだけで、SKILL.mdの構造化やreferencesファイルの整理をClaudeが手伝ってくれます。

SERIES WRAP-UP

連載全体のまとめ

全5回の連載を通して、Agent Skillsの「なぜ」「何を」「どう」を体系的に解説しました。

Part 1
Skillsとは何か

基本概念、段階的開示の仕組み、アーキテクチャ

Part 2
SKILL.mdの書き方

仕様、4つの記述パターン、実践サンプル

Part 3
Skillの作り方

評価駆動開発、共同開発、アンチパターン

Part 4
他機能との使い分け

Projects・MCP・Subagent等との使い分けと組み合わせ

Part 5
実践ガイド(本記事)

プラットフォーム対応、共有・配布、エンタープライズ運用

4

プリビルトSkills

8

最大Skills/リクエスト

4

対応プラットフォーム

Agent Skillsは「AIエージェント向けの再利用可能な専門知識パッケージ」です。SKILL.mdファイル1つから始められるシンプルさと、段階的開示による効率性、オープン標準としてのポータビリティが強みです。Claudeだけでなく、Cursor、GitHub Copilot、VS Code、OpenAI Codexなど多くのAIツールで採用が広がっており、一度作ったSkillを複数プラットフォームで再利用できる世界がすでに実現しつつあります。

HOMULA SUPPORT

homulaの支援体制

homula's Insight

homulaの支援実績では、Skill設計を含むAIエージェントの構築をブートキャンプ(3-5日)で動くプロトタイプまで仕上げ、2-4ヶ月で本番導入を完了しています。400社超の支援実績に基づくベストプラクティスを活用できます。

FAQ

よくある質問

いいえ、カスタムSkillsはプラットフォーム間で同期されません。APIにアップロードしたSkillはClaude.aiやClaude Codeでは利用できず、その逆も同様です。Gitリポジトリを唯一の信頼できるソース(Single Source of Truth)として管理し、各プラットフォームに個別にデプロイする運用設計が推奨されます。

現時点ではClaude.aiのカスタムSkillsは各ユーザー個人に紐づいており、組織全体での共有や管理者による一括管理はできません。チーム展開にはClaude API(ワークスペーススコープで共有可能)またはClaude Code(Gitリポジトリ経由で配布可能)の利用を推奨します。

Enterprise(最高)> Personal > Project > Plugins(最低)の順で優先されます。たとえばEnterprise Skillとしてcode-reviewが定義されていれば、個人やプロジェクトに同名のSkillがあってもEnterprise版が優先されます。意図しない上書きを避けるため、frontend-pr-reviewのように具体的な命名を推奨します。

Skillsはコードを実行し、ファイルシステムにアクセスし、外部ツールを呼び出す能力を持つため、データ流出・不正アクセス・セキュリティ制御の迂回などのリスクがあります。デプロイ前に全ファイルの通読、サンドボックスでのスクリプト実行テスト、ネットワークアクセスパターンの検索、ハードコード認証情報の確認を必ず実施してください。

APIでは1リクエストあたり最大8 Skillsという制約があります。まず狭く具体的なSkillから始め、パターンが見えたら統合するアプローチが推奨です。たとえばformatting-sales-reports・querying-pipeline-data・updating-crm-recordsの3つを、評価スイートで同等性能を確認した上でsales-operationsに統合できます。ロールベースのバンドル(営業向け・エンジニア向け等)も有効です。

Skills運用を含むAIエージェント導入を一緒に設計しませんか?

homulaは、エンタープライズ企業向けにAIエージェントの戦略策定・PoC・実装・運用・内製化までを一気通貫で支援するAIインテグレーターです。5日間のブートキャンプで、動くプロトタイプとROI試算を構築できます。