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AIエージェント

KPMG・PwCの「全社Claude導入」が示す、プロフェッショナルファームのAI全社展開設計

2026年5月、KPMG(276,000人)とPwCが相次いでClaudeを全社基盤に組み込むと発表。クライアント提供プラットフォームへの統合、3万人規模の認定、AIネイティブな新規事業まで——「全社AI」の設計を一次情報から読み解き、日本企業が踏むべき順序を解説します。

読了 12分|峻 福地

プロフェッショナルファームが「全社AI」に動いた2026年春

homulaは、エンタープライズ企業向けにAIエージェントの戦略策定・PoC・実装・運用・内製化までを一気通貫で支援するAIインテグレーターです。

2026年5月、AI導入の「お手本」とされてきたプロフェッショナルファームが、立て続けに大きな一手を打ちました。5月14日にPwC5月19日にKPMGが、それぞれAnthropicとの提携を拡大し、ClaudeをPoCや一部部門ではなく全社の業務基盤として組み込むと発表したのです(Anthropic: PwC / Anthropic: KPMG)。

注目すべきは規模ではなく設計です。両社とも「便利なツールを配る」のではなく、クライアント提供基盤への統合・人材の大量認定・AIネイティブな新規事業という、組織を作り替えるレベルの展開を同時に走らせています。本記事では、この2件を一次情報から読み解き、日本企業が「全社AI」に向かう際の順序を整理します。

KPMG:クライアント提供基盤「Digital Gateway」にClaudeを組み込む

KPMGの発表(2026年5月19日)の核心は、276,000人・138の国と地域で働く全従業員がClaudeを使えるようにすることに加え、それをクライアント向けの提供基盤そのものに埋め込む点にあります(KPMG公式リリース)。

具体的には、Microsoft Azure上に構築されたKPMGの中核プラットフォーム「Digital Gateway」に、対話型の Claude CoworkManaged Agents(複数の専門エージェントを束ねる実行基盤)を統合します。税務・法務といったクライアント業務に、AIエージェントが常駐する形になります。

KPMG Digital Gateway へのClaude統合Claude(Anthropic)Cowork / Managed AgentsDigital Gateway(Microsoft Azure上の中核基盤)KPMGの知見・独自ツール・クライアントデータを統合税務・法務サービスサイバーセキュリティ脆弱性の発見・修正KPMG Blazeレガシー近代化276,000人・138の国と地域の全従業員が利用図1: KPMGは「使う」のではなく、提供基盤そのものにClaudeを埋め込んだ

用途は税務・法務にとどまりません。サイバーセキュリティでは、KPMGの「Trusted AI」フレームワークに沿って、Claudeで重要システムの脆弱性を発見・修正します。さらにレガシー資産の近代化を担う「KPMG Blaze」では、Claude Code を使って古いIT資産(COBOL等)を刷新します。プライベートエクイティ領域では、AnthropicがKPMGを「優先コンサルタント」と位置づけ、投資先企業へのClaude導入を共同で進めます。

KPMGのグローバル会長兼CEO ビル・トーマス氏は、この提携を「責任あるAIへの共通のコミットメントを反映し、セキュリティ・信頼・ガバナンスを優先するもの」と述べています。税務担当の副会長 Rema Serafi 氏は、従来は数週間かかった作業が「CoworkとManaged Agentsの統合で、いまや数分で終わる」と語っています(出典: Anthropic: KPMG)。

PwC:3万人認定と「Office of the CFO」——AIネイティブな事業部を作る

PwCの発表(2026年5月14日)は、展開の「層」がよく見える事例です。Claude Code と Cowork を米国チームから順次展開し、最終的に数十万人規模のグローバル人材へ広げます。同時に、Anthropicとの共同**Center of Excellence(CoE)**を設け、30,000人の専門家にClaudeのトレーニングと認定を行います(PwC公式リリース)。

最も象徴的なのは、Claudeを土台にした**新しい事業部「Office of the CFO」**を立ち上げる点です。これは銀行・保険・医療といった規制業界のCFO組織変革に特化し、Anthropicの技術を中核に据えた最初の独立事業ユニットとされています。AIを「既存業務の効率化」ではなく「新しい事業の柱」に据えた格好です。

PwCの3層展開——配るだけで終わらせない① 人材30,000人共同CoEでトレーニング・認定Claude Code / Coworkを米国→世界へ展開② 本番実績保険引受 10週→10日メインフレーム近代化HR:1週間で試作サイバー:時間→分最大70%の時間削減③ 新規事業Office ofthe CFO規制業界のCFO組織変革に特化した独立事業ユニット「教育」「本番で結果を出す」「事業化」を同時に走らせている図2: AIを効率化の道具ではなく、新しい事業の柱に据えた

PwCはすでに本番でClaudeを動かしています。保険引受は10週間から10日へ、メインフレーム(COBOL)の近代化は予定どおり・予算内で進行、HR業務の変革は1週間で試作・2か月未満で本番アプリ化、サイバーのインシデント対応は「数時間から数分」へ短縮——と、業務横断で最大70%の納期短縮を報告しています。社内では「ChatPwC」というAIアシスタントと、3つのAIインキュベーション拠点を運用しています。

AnthropicのCEO ダリオ・アモデイ氏は「10週間かかっていた保険引受がいまは10日。数時間かかっていたセキュリティ作業が数分で終わる」と、具体的な変化を強調しています(出典: Anthropic: PwC)。

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数字の出典について。本記事の数値(276,000人・30,000人・10週→10日・最大70%など)は、いずれもAnthropicおよび各ファームの公式発表に基づきます。一部メディアはPwCの規模を「364,000人」と報じていますが、これは公式発表(「数十万人規模に拡大」)と一致しないため本記事では採用していません。

2社に共通する「全社展開の設計」

KPMGとPwCはアプローチが異なりますが、全社AIを成立させている要素は驚くほど共通しています。

設計要素KPMGPwC
基盤への統合Digital Gateway(Azure)にCowork/Managed Agentsを埋め込みClaude Code/CoworkをCoE経由で全社展開
人材の体系化全従業員(276,000人)が利用30,000人を認定(共同CoE)
本番での成果税務作業が「数週間→数分」業務横断で最大70%短縮
ガバナンスTrusted AIフレームワーク規制業界向けに設計(Office of the CFO)
新しい収益源PE投資先へのClaude導入を共同提供Claudeネイティブの新事業部を新設

ここから読み取れる原則は3つです。第一に、ツール配布ではなく基盤統合。エージェントを既存の提供プラットフォーム(KPMGならDigital Gateway)に埋め込み、業務の流れの中で使える状態にしている。第二に、人材の体系化。CoEと認定制度で「使える人」を組織的に増やしている。第三に、ガバナンスを前提に組み込む。Trusted AIや規制業界対応のように、統制を後付けではなく設計の初期から織り込んでいる点です。

homulaの観点:日本企業はどの順序で「全社AI」に向かうか

KPMG・PwCの事例は規模こそ桁違いですが、設計の順序は日本企業がそのまま参考にできます。重要なのは「全社展開」を一足飛びに狙わないことです。

全社AIへの現実的な順序① 業務棚卸しどこを任せ、どこを止めるか② PoC最短5日で成果を確認③ 基盤統合ツール接続(MCP)+承認・監査④ 内製化人材育成で横展開KPMG/PwCも「基盤統合」と「人材体系化」を両輪で回したhomula: ①②④をブートキャンプで/③をAgens・Agens Controlで支援図3: 全社展開は一足飛びにせず、PoC→基盤→内製化の順で積む

homulaの支援領域は、まさにこの順序にあります。Agens はMCPを活用したエンタープライズ向け統合プラットフォームとして、200以上のツールと構築ゼロで接続し、KPMGの「Digital Gatewayへの統合」に相当する“業務基盤への組み込み”を、自社環境で実現します。Agens Control は承認フロー・DLP・5年分の監査ログ・RBACを提供し、PwCの「規制業界対応」やKPMGの「Trusted AI」に相当するガバナンスを担います。そして AIエージェント・ブートキャンプ が、両社の共通項だった「人材の体系化」を、業務棚卸し・プロトタイプ構築・ROI試算として3〜5日で立ち上げます。

両社が示したのは、「全社AIとは、AIを配ることではなく、業務基盤・人材・ガバナンスを同時に設計すること」だという事実です。日本企業は規模を真似る必要はありません。自社の主要業務ひとつで、この設計を最小構成で回すことから始めれば十分です。

まとめ

2026年5月、KPMGとPwCはClaudeを「試す」段階から「全社の業務基盤に組み込む」段階へ進めました。共通していたのは、提供プラットフォームへの統合・人材の体系的な認定・ガバナンスの作り込み、という設計の三本柱です。

プロフェッショナルファームは、自らが顧客にAI変革を売る立場として、まず自社で全社展開のモデルを作りにいきました。日本企業にとっての示唆は明快です。ツールを配るだけでは全社AIにならない。基盤・人材・統制を同じ設計の上に乗せること——ここから逆算すれば、自社が次に踏むべき一歩が見えてきます。


「全社AI」は規模ではなく設計の問題です。自社のどの業務から、どの順序で基盤・人材・統制を積むか——最初の一歩を一緒に設計しませんか。

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株式会社homula(ホムラ)は、2019年創業・累計調達3.2億円のAIインテグレーターです。n8n・Dify・LangGraphを活用したAIエージェント導入支援を専門とし、戦略策定からPoC(最短5日)、本番実装、運用・内製化までを一気通貫で提供しています。