約200組織
1社の侵害から、下流の約200組織へ
ソフトウェア企業1社の侵害を起点に、下流の約200組織のデータが抽出され、セッション情報が一括で窃取された。報告は、作業のほぼすべてをAIエージェントが実行したとしている。
Anthropic Threat Intelligence Report(2026-09)
公的機関・標準の一次文書に基づく統制の整理
AIエージェントは、正規の権限と認証情報で操作を実行します。外から届いた指示に従っても、ログ上は内部不正と区別がつかない。 本資料は、経済産業省・IPA・JPCERT/CC・デジタル庁・CISA・NIST・OWASPの一次文書に基づいて、任せる範囲の決め方と、エージェントの外側で統制を強制する設計・手順を25ページにまとめました。
第1.0版・2026年10月発行 / 出典番号を付けた記述は付録の一次文書に基づき、本書の提案は「本ガイドの提案」と明記して区別しています。
Why now
エージェントは意図どおりに動くとは限りません。外部から届いた文書やWebページに埋め込まれた指示に従ってしまうことがあり、制限を回避したり、曖昧な指示から意図しない処理を行ったりすることもあります。
そのときエージェントは、与えられた正規の権限と認証情報で操作を実行します。IPAは、こうした振る舞いは内部不正と区別がつかないおそれがあり、統制の設計はこれを前提に置く必要があるとしています。
公表された事例 — AIを経由して情報が外に出た経路は、すでに公表されている
約200組織
ソフトウェア企業1社の侵害を起点に、下流の約200組織のデータが抽出され、セッション情報が一括で窃取された。報告は、作業のほぼすべてをAIエージェントが実行したとしている。
Anthropic Threat Intelligence Report(2026-09)
DNS経由
認証不要の公開フォームから送った指示に従い、AIエージェントが顧客データをDNS経由で外部へ出す経路が公表された。外から届く入力は「指示」として働く。
Zenity Labs(2026-09)
19,996名分
業務利用が許可されていない外部の生成AIサービスに、特定保健指導の対象者19,996名分の個人情報(疾患情報を含む)が入力された。従業員本人の申告で判明。
委託元の健康保険組合の公表(2026-10)
Risk structure
経済産業省サブWGが整理した12のリスク要因を、エージェントの入力・判断・記憶・ツール・部品・委任の各所に配置しました。どこで何が起きるかを1枚で把握でき、次の8原則がそれぞれどの要因に効くのかが追えます。
8 principles
統制はエージェントの判断に委ねず、外側で強制する。本資料は8原則を、原則ごとに図解・考え方・具体策・根拠となる一次文書の原文とともに1ページずつ示します。以下は各原則の図です。
権限・操作・通信先の制御を、モデルやプロンプトに委ねず、ゲートウェイ・OS・ネットワークの層で強制する。
人のアカウントや権限を流用しない。接続先・ツールごとに最小の権限・スコープを与える。
長期間有効なAPIキーを使わない。設定ファイル・プロンプト・配布物に埋め込まず、外側の資格情報管理から必要時に注入する。
送信・投稿・削除・決済・権限変更など取り消しが難しい操作は人の承認を必須にし、承認画面に「誰が・何に・何を」を表示する。
外向き通信は迂回できないプロキシを通し、許可した宛先だけに限定する。DNS・画像の読み込み・メッセージ送信も経路として扱う。
呼び出し1件ごとに、エージェントIDと委任した人を含めて人が読める形式で記録し、エージェントが書き込めない場所に保管する。
渡す情報と、会話履歴・メモリ・実行ログ・中間成果物に含まれる個人データを最小化し、保存期間を定めて削除する。
SaaS/PaaS提供者・構築運用の委託先・再委託先について、選定時に安全管理措置を確認し、契約で義務を定め、契約後も継続的に確認する。
8原則それぞれの「考え方」「具体的に何をするか」「根拠の原文」は資料に収録
Implementation
原則を知るだけでは導入は進みません。第4章で任せる範囲を決め、第II部で導入前・導入時・運用の順に実装し、形態ごとの弱点を補う。資料はその手順を図と箇条書きで示します。
第4章
経産省サブWGの自律性レベル(L1〜L4)と行動範囲レベル(E1〜E3)を4つの区分に整理し、区分ごとに必須・推奨の統制を一覧化。任せる範囲を決めると、やるべき統制が決まる。
第II部
導入前のレベル判定と棚卸しが、以降の設計の前提になる。ID・認証情報・ツール・通信先・承認・ログ・データ保持・委託先の設計から、導入時のテスト、運用の監視まで。
第6章
権限・注入・承認・egress・ログ・停止。設計した統制が実際に働くことを、本番前に試験で確認する。注入テストではDNS・画像読み込み経由の送出も試す。
第8章
接続の形態ごとに固有の注意点がある。ツール定義の変更、Webページ内の指示、中に置いた認証情報、基盤自体の脆弱性。第5〜7章の統制に加えて確認する。
Checklists
各問・各項目に根拠(原則・出典)と、本書で手順を示した節番号を付けています。以下は抜粋です。
エージェントは人間のユーザーとは別のIDで動作するか。IDaaS(Entra/Okta等)と連携できるか
原則2接続するツール・MCPサーバーを許可リストで固定できるか。ツール定義の変更を検知するか
原則1高影響操作(送信・削除・変更・決済・権限変更)を人間の承認なしに実行し得るか。承認はプロンプトでなく基盤で強制されるか
原則4ツール呼び出し単位の監査ログを、エージェントIDと委任ユーザーを含めて、利用組織が自分で参照できるか
原則6即時停止(kill switch)の手段と、停止後の認証情報一括失効
第7.4節残り13問(認証情報の保管・SSRF対策・SBOM・再委託先・認証取得状況・管理機能・移植性など)は資料に収録
対象業務ごとにL(自律性)・E(行動範囲)を判定した。E3は分割を検討した
導入前
自社の情報区分ごとに、エージェントへ入力・参照させてよいかを定め、周知した
導入前
認証情報は資格情報管理で保管し、設定ファイル・環境変数・プロンプト・リポジトリ・配布物に書いていない
導入前
権限・注入・承認・egress・ログ・停止のテストを実施し、結果を記録した
導入時
即時停止、認証情報一括失効、ログ保全、影響範囲特定の手順を定め、訓練している
運用
導入前14・導入時3・運用4の全21項目は資料に収録
Table of contents
統制の前提と、公表事例
p2–3原理原則 — リスクの構造(R1〜R12)、統制の8原則、統制レベルの考え方
p4–14実装ガイド — 導入前・導入時・運用・形態別の追加事項
p15–20チェックリスト — ベンダー質問票18問、自社点検21項目、準拠文書一覧、用語
p21–25Who this is for
「SaaS型のAIエージェントを導入したいが、情シスに何を確認されるか分からない」「ベンダーに何を聞けば安全性を判断できるのか」「経産省のガイドライン公表前に、いま公開されている一次文書で何が言えるのかを押さえたい」——そうした方のために作りました。