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WHITE PAPER無料・PDF 25ページ

公的機関・標準の一次文書に基づく統制の整理

業務AI・AIエージェント導入の
情報セキュリティ実践ガイド

AIエージェントは、正規の権限と認証情報で操作を実行します。外から届いた指示に従っても、ログ上は内部不正と区別がつかない。 本資料は、経済産業省・IPA・JPCERT/CC・デジタル庁・CISA・NIST・OWASPの一次文書に基づいて、任せる範囲の決め方と、エージェントの外側で統制を強制する設計・手順を25ページにまとめました。

  • SaaS型のAIエージェントを選ぶとき、ベンダーに何を確認すべきかが分かる(質問票18問)
  • 情シス・セキュリティ部門の審査に、一次文書の根拠つきで答えられる(統制の8原則)
  • 導入前・導入時・運用で、自社が何をしたかを21項目で点検できる
25ページ
読了 約40分
17点
図解
37件
準拠文書(公的機関・国際標準・公表事例)

第1.0版・2026年10月発行 / 出典番号を付けた記述は付録の一次文書に基づき、本書の提案は「本ガイドの提案」と明記して区別しています。

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Why now

統制は、エージェントが意図どおりに動かない場合を前提に設計する。

エージェントは意図どおりに動くとは限りません。外部から届いた文書やWebページに埋め込まれた指示に従ってしまうことがあり、制限を回避したり、曖昧な指示から意図しない処理を行ったりすることもあります。

そのときエージェントは、与えられた正規の権限と認証情報で操作を実行します。IPAは、こうした振る舞いは内部不正と区別がつかないおそれがあり、統制の設計はこれを前提に置く必要があるとしています。

図1 同じエージェントが、意図どおりに動く場合と、意図に反して動く場合。R1などは経済産業省サブWGが整理したリスク要因の番号

公表された事例 — AIを経由して情報が外に出た経路は、すでに公表されている

約200組織

1社の侵害から、下流の約200組織へ

ソフトウェア企業1社の侵害を起点に、下流の約200組織のデータが抽出され、セッション情報が一括で窃取された。報告は、作業のほぼすべてをAIエージェントが実行したとしている。

Anthropic Threat Intelligence Report(2026-09)

DNS経由

公開フォームの指示で、顧客データが外へ

認証不要の公開フォームから送った指示に従い、AIエージェントが顧客データをDNS経由で外部へ出す経路が公表された。外から届く入力は「指示」として働く。

Zenity Labs(2026-09)

19,996名分

許可されていない生成AIへの個人情報の入力

業務利用が許可されていない外部の生成AIサービスに、特定保健指導の対象者19,996名分の個人情報(疾患情報を含む)が入力された。従業員本人の申告で判明。

委託元の健康保険組合の公表(2026-10)

外から届く文書・Webページ・フォームR1埋め込まれた指示に従ってしまう利用者業務の担当者指示AIエージェントR2判断を誤る・制限を回避するR3記憶に指示が混入する・機密が残る操作ツール・接続先社内外のシステムR4権限が過大・不適切正規権限の誤用仕事を任せる委任先のエージェントR6指示・権限が不適切に伝わる誤判断も伝わるMCP・API・コネクタ・プラグイン組み込むR5侵害・改ざんされる
図2 経済産業省サブWGのリスク要因を、本ガイドが各要因の内容に沿って配置した

Risk structure

リスクは、エージェントの仕組みで生じ、組織や運用のあり方によって広がる。

経済産業省サブWGが整理した12のリスク要因を、エージェントの入力・判断・記憶・ツール・部品・委任の各所に配置しました。どこで何が起きるかを1枚で把握でき、次の8原則がそれぞれどの要因に効くのかが追えます。

8 principles

統制の8原則

統制はエージェントの判断に委ねず、外側で強制する。本資料は8原則を、原則ごとに図解・考え方・具体策・根拠となる一次文書の原文とともに1ページずつ示します。以下は各原則の図です。

外部から届く入力文書・Webページ・フォームR1指示に従う統制層 ここで強制するゲートウェイ・OS・ネットワークエージェントここには統制を委ねない・モデルの判断・プロンプトの指示・エージェント側の設定許可した操作・宛先だけ通す許可外の宛先外側で遮断するR2回避を試みる
01

統制は、エージェントの外側で強制する。

権限・操作・通信先の制御を、モデルやプロンプトに委ねず、ゲートウェイ・OS・ネットワークの層で強制する。

流用する場合人のIDをエージェントにも使う担当者エージェント人のID接続先R4R11被害が人と同じ範囲に及び、ログでも人と区別できない原則エージェントごとに別のID担当者人のIDエージェントエージェントID最小の権限付与しない接続先・ツールごとに、必要な権限だけ
02

エージェントには独立したIDを付与し、必要最小限の権限だけを与える。

人のアカウントや権限を流用しない。接続先・ツールごとに最小の権限・スコープを与える。

持たせる場合長期のキーを埋め込むエージェント長期APIキー設定ファイル・環境変数プロンプト・配布物アプリ解析で特定される特定されたキーが不正利用される国内事案で確認された手口[A2][A3]原則外側から、必要なときだけ資格情報管理保管庫(KMS/HSM)暗号化して保存必要時に短寿命でエージェントキーを保存しない接続先期限が来れば失効。平文で保存・ログ出力しない
03

認証情報は短寿命にし、エージェントに持たせない。

長期間有効なAPIキーを使わない。設定ファイル・プロンプト・配布物に埋め込まず、外側の資格情報管理から必要時に注入する。

エージェントR7高速・大量に実行通常の操作高影響の操作送信・投稿・削除変更・決済・権限変更人が承認する実行するエージェントID委任したユーザー対象操作内容送信先承認後実行実行R10形だけの承認
04

高影響の操作は人が承認する。承認を形骸化させない。

送信・投稿・削除・決済・権限変更など取り消しが難しい操作は人の承認を必須にし、承認画面に「誰が・何に・何を」を表示する。

エージェントサンドボックス・ブラウザHTTPDNS名前解決画像などの読み込みメッセージ送信・投稿プロキシ迂回・再設定できない許可した宛先だけに到達許可外の宛先内部アドレスメタデータHTTP以外(DNS)での持ち出しも公表されている[A7]
05

通信先を限定する。名前解決と外向きアクションも対象にする。

外向き通信は迂回できないプロキシを通し、許可した宛先だけに限定する。DNS・画像の読み込み・メッセージ送信も経路として扱う。

エージェントツール呼び出し・外部アクセス・承認接続先1件ごとに記録ログ(人が読める形式)時刻エージェントID委任したユーザーツール・接続先入力・出力の要約承認の有無・承認者結果エージェントは書き込めない利用組織が自分で参照R11責任分界の判断
06

すべてのツール呼び出しを記録し、改竄から守る。

呼び出し1件ごとに、エージェントIDと委任した人を含めて人が読める形式で記録し、エージェントが書き込めない場所に保管する。

社内の情報情報区分で決める入力・参照してよい入力しない最小限エージェント持つデータ会話履歴・長期メモリ実行ログ中間ファイル保存期間を定める目的を終えたら削除する被害規模は持っていたもので決まる
07

データは持たない。目的を終えたら消す。

渡す情報と、会話履歴・メモリ・実行ログ・中間成果物に含まれる個人データを最小化し、保存期間を定めて削除する。

自社(委託元)委託先・SaaS提供者再委託先渡す情報・権限は最小限R11責任があいまいに選定時安全管理措置を確認する契約時アクセス権・ログ管理報告義務・削除を定める契約後継続的に確認する(再委託先を含む)業務終了後委託先でのデータ削除を徹底する
08

委託先・ベンダーと「共に管理する」。

SaaS/PaaS提供者・構築運用の委託先・再委託先について、選定時に安全管理措置を確認し、契約で義務を定め、契約後も継続的に確認する。

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8原則それぞれの「考え方」「具体的に何をするか」「根拠の原文」は資料に収録

Implementation

任せる範囲が広いほど、必須の統制を増やす。

原則を知るだけでは導入は進みません。第4章で任せる範囲を決め、第II部で導入前・導入時・運用の順に実装し、形態ごとの弱点を補う。資料はその手順を図と箇条書きで示します。

第4章

任せる範囲を、自律性と行動範囲の2軸で決める

経産省サブWGの自律性レベル(L1〜L4)と行動範囲レベル(E1〜E3)を4つの区分に整理し、区分ごとに必須・推奨の統制を一覧化。任せる範囲を決めると、やるべき統制が決まる。

L1〜L2 × E1人が進める・承認し、参照のみL1〜L2 × E2人が進める・承認し、限定的に変更L3〜L4 × E1〜E2AIが自律的に処理し、参照または限定的に変更E3(すべてのL)対象・操作を限定せず変更できる原則として避け、E2への分割を検討ここから始めるL4高度自律L3条件付き自律L2人間協働L1人間主導自律性 上ほど人の関与が少ないE1参照操作E2限定的な変更操作E3包括的な変更操作行動範囲 右ほど変更できる範囲が広い
図11 自律性と行動範囲の組み合わせ。4つの区分と色は本ガイドの提案

第II部

導入前・導入時・運用の順に、8原則を実装する

導入前のレベル判定と棚卸しが、以降の設計の前提になる。ID・認証情報・ツール・通信先・承認・ログ・データ保持・委託先の設計から、導入時のテスト、運用の監視まで。

導入前第5章 p.15〜175.1〜5.2レベル判定・棚卸し5.3〜5.6ID・認証情報・ツール・通信先5.7〜5.10承認・ログ・データ保持・委託先導入時第6章 p.186.1基盤の堅牢性6.26つのテスト6.3公開面の最小化運用第7章 p.197.1〜7.2脆弱性管理・監視7.3棚卸し7.4インシデント対応形態別第8章 p.208.1〜8.2MCP・ブラウザ8.3サンドボックス8.4ワークフロー基盤このページ
図12 第II部の全体像

第6章

導入時は、統制が効くことを6つのテストで確かめる

権限・注入・承認・egress・ログ・停止。設計した統制が実際に働くことを、本番前に試験で確認する。注入テストではDNS・画像読み込み経由の送出も試す。

権限テスト原則2許可していない接続先・操作・データに到達できない注入テストR1・原則1埋め込んだ指示で、承認なしの外向きアクションが起きない承認テスト原則4高影響の操作が承認なしに実行されないegressテスト原則5許可外・内部アドレス・メタデータに到達できないログテスト原則6すべてが呼び出し単位で記録され、利用組織が参照できる停止テストkill switch実行中のエージェントを即時に停止できる
図15 導入時に行う6つのテスト(第6.2節)

第8章

MCP・ブラウザ・サンドボックス・ワークフロー基盤、形態ごとの弱点を補う

接続の形態ごとに固有の注意点がある。ツール定義の変更、Webページ内の指示、中に置いた認証情報、基盤自体の脆弱性。第5〜7章の統制に加えて確認する。

8.1MCP接続主な注意点ツール定義の変更トークンの中継8.2ブラウザ自動化主な注意点Webページ内の指示ログイン済みアカウント8.3コード実行主な注意点中に置いた認証情報外向き通信8.4ワークフロー基盤主な注意点基盤自体の脆弱性LLMノード経由の迂回
図17 接続の形態ごとの主な注意点

Checklists

そのまま使える、ベンダー質問票18問と自社点検21項目。

各問・各項目に根拠(原則・出典)と、本書で手順を示した節番号を付けています。以下は抜粋です。

ベンダー質問票

第9章・全18問
  1. 01

    エージェントは人間のユーザーとは別のIDで動作するか。IDaaS(Entra/Okta等)と連携できるか

    原則2
  2. 04

    接続するツール・MCPサーバーを許可リストで固定できるか。ツール定義の変更を検知するか

    原則1
  3. 05

    高影響操作(送信・削除・変更・決済・権限変更)を人間の承認なしに実行し得るか。承認はプロンプトでなく基盤で強制されるか

    原則4
  4. 07

    ツール呼び出し単位の監査ログを、エージェントIDと委任ユーザーを含めて、利用組織が自分で参照できるか

    原則6
  5. 15

    即時停止(kill switch)の手段と、停止後の認証情報一括失効

    第7.4節

残り13問(認証情報の保管・SSRF対策・SBOM・再委託先・認証取得状況・管理機能・移植性など)は資料に収録

自社点検チェックリスト

第10章・全21項目
  • 対象業務ごとにL(自律性)・E(行動範囲)を判定した。E3は分割を検討した

    導入前

    5.1
  • 自社の情報区分ごとに、エージェントへ入力・参照させてよいかを定め、周知した

    導入前

    原則7
  • 認証情報は資格情報管理で保管し、設定ファイル・環境変数・プロンプト・リポジトリ・配布物に書いていない

    導入前

    5.4
  • 権限・注入・承認・egress・ログ・停止のテストを実施し、結果を記録した

    導入時

    6.2
  • 即時停止、認証情報一括失効、ログ保全、影響範囲特定の手順を定め、訓練している

    運用

    7.4

導入前14・導入時3・運用4の全21項目は資料に収録

Table of contents

目次

  1. はじめに

    統制の前提と、公表事例

    p2–3
  2. 第I部

    原理原則 — リスクの構造(R1〜R12)、統制の8原則、統制レベルの考え方

    p4–14
  3. 第II部

    実装ガイド — 導入前・導入時・運用・形態別の追加事項

    p15–20
  4. 第III部

    チェックリスト — ベンダー質問票18問、自社点検21項目、準拠文書一覧、用語

    p21–25

Who this is for

こんな方におすすめ

  • 情報システム・セキュリティ部門の責任者(CISO / CIO)
  • AIエージェント導入を進める業務部門・DX推進の責任者
  • SaaS/PaaS型AIエージェントの選定・契約を担当する方
  • 自社構築のエージェント基盤を設計・運用するエンジニア

「SaaS型のAIエージェントを導入したいが、情シスに何を確認されるか分からない」「ベンダーに何を聞けば安全性を判断できるのか」「経産省のガイドライン公表前に、いま公開されている一次文書で何が言えるのかを押さえたい」——そうした方のために作りました。

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